ベトナム人技能実習生送り出し機関で働く日本人が、海外就職の現実を語ります。

一昨日でベトナムに来てちょうど3年となり、4年目がスタートしました。

3年間なんてまだまだ短い方で、ベトナム初心者レベルだと思っています。

アメリカに4年住んでいたことがありますが、言葉や文化に苦労しなくなるのに3年かかり、4年目でようやく悟りを開けて苦労よりも楽しみが多くなるようなところがありました。

ベトナムではベトナム語を挫折中ということもあって、全然悟りを開くには至っておりません。まだまだです。

今日、ベトナムに来るきっかけとなった前働いていた日系企業の人と話をしました。その人も4年くらいこっちで働いているのですが、お互いまだまだ初心者レベルだということを認識しつつも、「お互い古くなったものよのう…」という話をしました。

ベトナムに来たときは日系企業の仕事をしていたため、日系企業相手に営業する仕事だったので、日本人の参加する異業種交流会などに、先輩社員に誘われたりしながら積極的に参加していました。

最近はこういう機会もなくなり、日本人と話す機会も少なくなっていることもあり、「あの人はどうしてますか?」みたいな話になると、だいたい帰国していますね。

3年以上いる人は少なく、1年〜2年くらいで駐在員も現地採用組もいなくなるようです。

同じところで働いていた同世代ぐらいの女性が、「若い人ならそれでいいのよう。海外で2年働いていました、となれば、履歴書に箔がつくでしょう」ということを言っていて、なるほどなと思いました。

その昔読んだ本で、こういう本がありました。

 内容はあまりよく覚えていませんが、文系で外国語もできなくて、特にスキルもない人が生きていくためには、海外就職が良い。なぜなら、英語も使うので身につくし、海外の支社などは小さいのでいろいろな仕事ができるし、若くして現地スタッフのマネジメントを経験することになるからその後のキャリアが開けるみたいな内容だったと思います。

この本の出版は2013年なので、当時はそうだったかもしれませんが、今はそうでもないかなと思います。

確かに若くして海外で多少の肩書のある仕事をした経験があることは、日本に帰国後の転職にも有利に働くことは考えられます。しかし「英語を使う」という場合は、英語が公用語の日系企業もありますが、上司の日本人の英語がへたくそすぎて何言っているかわからんとバカにされていて、自分では英語話しいるつもりなので上達しない人が多いし、仕事内容は、「同じ日系企業への営業」という場合が多く、特に海外でしか経験のできない仕事ではない。

日系企業もベトナム全体で2000社程度しかなく、営業するのに一番効率の良い方法が、交流会などに参加してお知り合いになり、その後飲み友達になって週に2〜3度はベトナム在住日本人と飲む。というものなので、海外で羽ばたくというよりも、狭い日本人村の中で毎日同じ人と顔合わせるみたいな状況になりやすいと思います。

私はそういうのが好きではない口だったので、より現地に近いような環境に身を起きたく、ローカル企業の送り出し機関に転職しました。しかし日系企業相手ではないものの、日本にある日本の企業相手の仕事には変わりありません。

日本人が海外で仕事をする場合は、「日本人だから」というのをウリにして、「日本人だから」という理由で採用され、働くことは、残念ですが現実です。

海外でMBAを取得した人でも、現地に残って、多国籍な人たちと競争して出世したり起業していく人は少ないようで、ほとんどが「日本人であること」で、優位性を持てる領域で生きていくしかないと言っていました。

中には英語ネイティブや、多国籍の超優秀な人を相手にスキルで勝負していける人もいるでしょうが、MBAもっていても英語はネイティブや他の国の人たちに比べて苦手感を持っている人が多いので、凡人はなかなかそこで勝負できません。

そう考えると「日本人だから」ということで評価されているわけではなく、実力で勝負している海外でプレーする日本人のスポーツ選手は本当にすごいと思います。

海外勤務で、日系企業だろうがローカルや外資系企業で日本人を採用する場合に求められる強みは、「日本人なんだから、日本の客とってきてよ」ということがほとんどです。よくフェイスブックで流れてくるローカル企業の日本人募集の求人なんかも、「日系企業への営業」がほとんどです。

海外進出したのだからローカル相手の仕事をしたいと思うかもしれませんが、ローカルのマーケットを開拓するつもりがないところもけっこうあり、日系企業や在住日本人、観光客の日本人を相手にするところも多くあります。ローカルのマーケットを開拓するところもありますが、そういう仕事は現地スタッフがやった方が効率が良いので、日本人には期待されていません。

日本人だから日系企業に営業できると思いますが、それも簡単ではありません。

たとえば、コピー機を製造販売している会社に採用されたとして、日系企業に営業に行くとしましょう。ベトナム中の日系企業は2000社、ハノイは何社かわかりませんが、仮に800社程度としましょう。

こっちで営業をしている会社にはすでにコピー機は入っているので、自腹きって参加しまくった日本人の交流会で日系企業とお知り合いになったり、電話などでアポが取れたりしても今入っているコピー機をやめて自分のところのものを使ってもらうような成果を出すのは本当に難しそうです。

または、客室数200室の日系企業の支配人になったとしましょう。本社からは、外国人が泊まると日本人客の評価が下がるということで、日本人で満室にすることを求められています。

計算してみたところ、ベトナムに来る日本人は去年が過去最大で87万人で、1日あたりに直してみると、2384人。そのうちのどれくらいの比率が一人一部屋宿泊し、家族やカップルで滞在するかはわかりませんが、仮に50%ずつだとすると、ベトナム中で必要な部屋は1日あたり1788室。

200室を日本人だけで満室にしようと思ったら、ベトナムに来る日本人の11%取らなければならないわけです。これはハノイだけでなく、ベトナム全体の日本人客の11%です。この他に在住者の出張ニーズもありますが、日系ホテルも10軒前後あるし、ローカルや外資でも評判のよいホテルもたくさんあるので、それを入れても半端ないハードルだということがわかります。

仮にハノイに来る日本人がベトナムに来る日本人の35%だとすると必要な部屋は625室。ハノイを訪れる日本人の32%を自分のホテルに連れてこなければなりません。

これは極端な架空の話ですが、現実にもこういった計算をしないのか、「ベトナムで日本は人気があるから日本食は売れるだろう」、「日系企業が多いから、進出すれば儲かるだろう」という安易な考えで進出する日系企業は少なくありません。

こういうところは会社または店の運命も半年からもって数年。その責任者として採用されてしまった場合は現実がわからない日本の本社からプレッシャーを受けながら、かなりメンタルを病みながら努力した挙げ句海外で無職または、実際に聞いた話ですが、ある日突然行方不明(勝手に帰国)になるかもしれません。

コピー機やホテル、飲食、人材紹介などほぼすべての業界であてはまりそうな場合は2000社すべてが営業の対象となりますが、特殊な機械など業種が限られている場合は、営業対象の企業が数百や数十となってしまい、分母が少なく、アポ取りからクロージングまですべてのプロセスで高い精度が必要です。

営業対象となる会社が100社しかない場合、本社から1日3社以上訪問するような指示を受けている場合は、一カ月ちょっとで全部回ってしまうわけで、「また来たか」となるわけです。

相手がヒマ人なら良いのですが、工場の責任者だったりすると工場が稼働している間は日本人1人か2人くらいで全部みなければならないらしいので、遊びに行けるような雰囲気ではないようです。

送り出し機関で働くのも、新規で組合との契約などは、不可能を可能にしなければならない努力を要するところもあるので、オススメしませんが、日系企業で働いている人も日々不可能を可能にする努力をしているのだと思います。

1〜2年くらいで帰国してしまう人はどういう理由で帰るのかは、あまり接する機会がないのでわかりませんが、前向きなキャリアチェンジもあれば、もうお腹一杯になっていたり、こういったメンタル上の問題もあるかもしれません。

海外就職はお気楽に見えたり、「日本だと俺と同じダメ人間だったのが、海外で輝いている」ように見えても、実際はそんな簡単なものではありません。それに挑戦するから輝いているように見える人もいるのかもしれませんが、よ〜く考えてから来た方が良いでしょう。

日本人の在住者が去年までベトナム全体で15,000人だったのが、今年は20000人に増えたようなので、ベトナムで働いている日本人が増えたこともあるので気になっています。

 

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