ベトナム人技能実習生送り出し機関で働く日本人が、技能試験からの特定技能はもうダメかもしれないと思う件につきまして
問題は金の話ではなく、技能試験から就職につながっている人数の少なさ
特定技能が海外でさっぱり進まず、ベトナムに関しては政府の協力が得られていないという状況を
「技能実習ほどうまみがないから」
という人はいます。
しかし、技能実習だって、日本からベトナムに入ってくるのは、だいたい3年間で18万円。3年間でたった18万円の収入を「うまみ」というのはどれだけベトナムのことをバカにしているんでしょうか。
しかも払っていない監理団体とか、全額現金でバックもらっている監理団体多数なので、実質ゼロの場合が多いようです。「うまみ」など最初からありません。
本当のところは別にあるように思います。
ベトナムは今年の始めから、特定技能の許可をテトのお年玉のようにバラまきました。許可もっていても持っていなくてもはじめていたところは多いし、ガイドラインも決まっていないので関係ないですが、
「あとは勝手にやってくれ。技能実習3号と同じでしょ」
という態度は感じられます。
問題は技能実習修了者のいない介護、外食、宿泊の技能試験が始まらないことです。
でもこれはベトナム政府側、担当者の役人の立場になってみれば、試験の開催などとても協力したくてもできないのではと思います。
理由は下記の表の通りで、日本国内でも海外でも試験の合格から就職に結びついているケースがあまりにも少ないからです。
就職率が低い理由としては
・まだ卒業していない
・滑り止めに受けている人が多い
・特定技能のことが知られていない
などいろいろ理由は並べられると思いますが、私がベトナムの役人でこの担当をしていたら、こんな言い訳は聞きたくない。国内でそれを改善して就職率を最低でも70%以上にしてから、海外に来やがれと思うでしょう。
試験に合格して就職に結びついている人が100%に近くないと、クビが飛ぶだけではなく、「これだけ努力したのに、就職できなかったじゃないか。詐欺師め!」と罵声を受けることになるからです。
実際、宿泊業がミャンマーで試験を行うにあたって、「合格者は全員採用するように」という裏の条件があったという風の噂を聞きました。
それで、ミャンマーで面接会を行ったそうですが、合格者85人中30人くらいが来て面接したそうですが、期待していたN2レベルではなく、N4レベルが多く、なかなか手を挙げるホテルが少なく、強制的に割り当てするかみたいな話もあったようです。
海外の役人からしたら、「N4で良いって法律でお前んところの法律で言ってんだから、N4でも採用しろやボケェ」という気持ちでしょうね。担当した役人かわいそう。
受験する人から見ても、努力して勉強して合格しても、面接で1%や2%しか受からないということもだんだんわかってくるので、特定技能を選ぶ人は増えないのではと思います。
最近では、短期ビザで日本に行って試験を受けてもらうという軽い提案もよくいただきますが、そもそも試験を受けること自体が狭き門ですし、合格できたとしても就職に結びつくのか?という理由から手を出しません。
先に面接して合格がでても、試験に申込できなかったらダメですし、試験に合格しても94~99%の確率で就職につながらないわけですから。
「今はじまったばっかりだからこういう状況で、時間が解決する」と言う人もいると思いますが、で出しで完全にコケているともいえます。時間がたって今の1%が5%や10%になるかもしれませんが、それでも合格者の5%から10%しか採用されないような試験を誰が受けるでしょうか?
受けるのは、「日本に行きたくても行けない人たち」です。
ハノイでも特定技能試験対策講座などを行う学校があるようで、結構な人数の元留学生や元技能実習生が受講しているそうです。
こういう人たちは、留学して専門学校を卒業したが就職できなかった、技人国の在留資格がでなかった人たちです。元技能実習生は違う職種で行きたい人もいるようです。
こういう人たちはだいたい脛に傷を持っているので、法的にはOKだったり、特定技能の在留資格が出た前例もあるようですが、企業が積極的に採用して、金をかけて在留資格の申請をするかどうかですね。
脛に傷とは
・留学中に28時間以上アルバイトしていることがバレて帰国することになった
・技能実習のときに改ざんした履歴書の内容を忘れた
・失踪したことがある
などです。
日本語はある程度できる人たちなので、試験の合格率は高いと思うのですが、面接で正直に話したときに、採用をためらう会社が多いのではないでしょうか。
そうすると、採用率を上げたくても上げられず、現地政府からは
「こんな合格率が低くて無駄な努力をさせるテストはもう許さん!」
と頭カンカンになって廃止に追い込まれるのではと思います。
宿泊業はミャンマーでの痛い経験からか、現地から愛想つかされているのかわかりませんが、2回目の試験の予定はないですよね。
介護はフィリピンやインドネシアなど、EPAの脱落組が多くいるところは、合格率はフィリピンで70%、インドネシアで50%で優秀な人材だと思うので就職につながる人も多いと思います。
しかしカンボジアでは114人中4人しか合格していなく、ネパールに至っては15人が受験して合格者0です。
介護は完全にアウト、宿泊も退場、外食は国内海外ともに合格率も安定していて、介護や宿泊ほど高い日本語力を期待していないので、これからの伸びが期待できるかもしれません。
建設もベトナムの短期大学で技能試験対策や日本語教育の勉強して技能試験受けてもらうということをやっているので、それがうまくいけば合格者から就職につながる人数は多いでしょう。
ただし、試験の主催団体が「自分たちが受けさせたい人だけ選んで受験させる」ということができればの話ですが、わざわざテスト受けて建設の仕事につきたい人もいないと思うので大丈夫ではないかと思います。
それに建設はわざわざ技能試験など行わなくても技能実習経験者がたくさんいるので人材には困らないと思います。
結論としては、特定技能はもう技能実習の延長にして、技能試験など無駄な努力はやめてしまえばいいのに。と思います。それに希望を抱いて努力して試験に合格したものの就職が決まらない外国人の若い人が気の毒だし、振り回されたバカ業者が悪質業者になるしか生き残る道がなくブローカー業に手を出すなど、良いことはありません。
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